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上原輝男記念会 上原先生著書からの語録

「上原輝男記念会 上原先生語録集」では元玉川大学教授、上原輝男(文学博士 専攻 心意伝承学)の語録を紹介しています。 非常に多岐に渡っていますが、先生が生涯をかけて探求された、この風土、歴史、文化に根付いた<日本人>ということですべては繋がっています。 多様な価値観によってふだんの生活も国際社会での関りも難しさをます現代社会において、先生の語録は大きなヒントになると考えています。

「原爆」② ツイッター055補足

*我々や子ども達に被爆体験について語られている言葉はたくさん残っています。その中でこれは平成5年の研究授業で6年生たちに語られた記録です。
反戦というよりは「人間の意識」についてがテーマです。

・・・「井の中の蛙」という諺知ってるでしょう。・・・人間というものはなかなか今住んでいる場所、今住んでいる時間、そういうものがなかなか分からない。そこから外に出た時に初めて分かる、というようなことなんですよね。
 (『意識の転換』と板書)
 意識を持っている、この意識が転換する。がらっと変わる。そういうのを『意識の転換』という。
 今日の授業をやって意識の転換が出来る様になるかならないか・・・こういうことを今日はやってもらおうと思っている。・・・ おじさんの体でもって、おじさん自身が体験したことで、意識の転換を起こさないわけにはいかない事にぶつかったの。それを少しお話しますね。・・・
 (原爆の体験談)
 ・・・おじさんは広島の駅へ向かいました。切符を買うために駅へ入る五~六メートル手前でした。・・・この時にドンだね。そしておじさんは倒れたというよりも倒れなくちゃいけないと思って身体を防いだ。 ところがその時おじさんの意識は、日常君達が今、君達の意識が普通に働いていると思うけれども、普通の状態ではなくなった。逆上というのわかる?気分が逆上してしまう。あるいは興奮してしまう。上がってしまうわけだ。普通の状態でなくなってしまう。意識が。転換を起こし始める。
 今、甲子園野球やっているね。初めて甲子園に行くとピッチャーが上がっちゃって、どこに投げていいのか分からないというような状態、時々起こす。・・・原爆でやられるんだから、当然逆上して訳分からないという状態になる。
・・・おじさんはもはや広島の駅に切符を買いに行ってるなんてケロッと忘れてしまっている。そしてそこが広島の駅前であるということも分からなくなった。なぜ分からなくなるかというとねそれは道が道でなくなる。道がつぶれたから。・・・建物は壊れてしまって、だから当然広島の駅はそこにあると思っても見えない。・・・今乗ってきた市電は既に倒れている。横になっている。そうすると大変なことが起こったということすらも分からない。人間というのは。
 この場所が広島の駅前だという認識ができない。今君達は北東小学校のこの教室に今いると思っている。だけども次の瞬間に君達は「ここどこ?」ということが起こりうるんだよ。今、丁度四十一分。君達は四十二分にもここにこうしているって思ってるだろうけれども、今ここで原爆が一発、バンといったらここにいることすらわからなくなる。そういう体験をおじさんは持った。
 もう一つ言っておこう。自分のとなり、見て御覧。その人は男の人であるか?女の人であるか?わかるだろ。原爆が一発落ちたら分からなくなっちゃう。・・・怪物の中にいるようなもんだよ。自分の顔だけ見られないから自分だけ人間の顔だと思っている。ところが回りはみんな怪物なんだね。そういう状態が起こった。だから、まとめるよ、最後に。
 人間の意識はなんという頼りないものだろう、とおじさんは思った。ここが広島の駅前であるということすらもわからない。隣にいるのが男か女かそれすらもわからない。こんな状態になりうる。
 人間の意識って何が本物なのだろう、とその時考えた。
 今日、君達にはこれから『意識の転換』ということを勉強してもらう。じゃ、先生かわるからね。




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上原輝男記念会
性別:
非公開
自己紹介:
本会は、上原輝男の功績を顕彰し、民俗学・国語教育学の発展に寄与する研究と交流を目的として設立されました。

ここでは上原先生が探求された事柄を、広く一般の方々にも知って頂くために、先生のあらゆる分野の語録を紹介しています。

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