国語教育の実践と研究は、日日ゆるがせにできない永遠の基礎的課題であります。近来言語活動を重視し言語能力の増進を要望される時運に従い、一見、国語教育の実践と研究は活発さを加えたかに見えますが、国語教育は技能的となり、読み、書き、話し聞く三領域に分割された言語生活形態の学習を専らとする風潮さえ生んで参りました。
われわれは生育しつつある子どもの言語生態を、正確に見届けることを、何よりの国語教育の基礎に据え、そこから出発すべきであります。遅ればせながら、感情・思考及び意識の発達とともにある子どものことばの実態を、調査、研究して、子どもの側からの発言を世に問いたいと思います。
思えば、子どもの言語生態とも言うべき基礎資料を得ることなしに、国語教育の目的と方法が論じられすぎました。また、われわれ現場人が、それらの基礎資料をどれほど整えて子どもに接していたでありましょう。国語教育の目的と方法に資すべき、最初の条件であったと思うのです。
われわれは相互に連絡協力して、この調査、研究を進め、小冊子といえども、発展途上における子どもの心とことばとの成長並びにその明暗を正確に写しとった貴重な資料を収集して、広く斯界に頒布することにいたしました。
昭和43年4月
児童の言語生態研究 同人一同
主宰 玉川大学教授 上原輝男
顧問 玉川大学教授 日名子太郎
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